2005年11月28日

1968年のビンボール

早春の休日のことであった。ビルの谷間のベンチの上は束の間の陽光が射しポカポカと暖かい。機材を伴って職人が来た。休日に工事というのはこの業界の常識ではあるが茶髪の若者はいかにも不機嫌そうであった。
はしごで二メートル近い場所に穴を開けようと電動ドリルを取り出した。彼はどの刃先を装着するのか34秒間迷った後、気だるそうに壁に穴を開けた。機械のあげる悲鳴は耳障りだ。
穴を開け終えた彼は一服しようとベンチほうにやって来た。ぼくは、皆が休んでるのに大変だなあ、アンカー打ち込むんだよなあ、と声をかけると、仕事ですからなんてことないっすよ、と答えた。
アンカーの錐の径はΦ12.5だった。アンカーの種類によって錐の径は微妙に違う。これから彼が打ち込もうとしているアンカーはΦ12が推奨だった。物忘れは激しくなってきたが、偶然にも数日前に問い合わせを受けたからよく憶えている。錐にマーキングしていなかったから、きっと穴深さも適当なんだろう。この場所には自動販売機が設置される予定でその固定の作業をしているのだという。
でも詳しいですね業界のひとっすか?この仕事に就いたばかりなもんで。
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ねじとねじ回し-この千年で最高の発明をめぐる物語[予定価格]

拙プログが「押し付けられた組織は押し付けた組織の目に見えないところで「手を抜く」羽目」になる」とKogai Dan氏より解釈されたので、おおこれはいかんいかん。あの文脈では誤解されてもしかたがないなあ(構わないけどなあ・笑)と思いましたので。

日本工業規格には言いたきこと沢山あれどそいつはさておき、ウイットねじは1968年に外された規格であります。代わりにユニファイねじとゆうインチの規格が後釜になりました。どー違うかってゆうと前規格はねじ山が55度、後者は60度。ねじの断面が三角山なので55度×3で165度。後者は60度×3で180度。ウイットは15度の遊びが規格で認められている。これがどうゆう理由で新規格になったのか(多分ねじ製作の工作機械がよくなったからでせう)は不勉強で申し訳ないのですが、同時期に規格化されたメートル法のミリねじも60度だ。このミリとインチの混在はハードディスクの取替えとかで難儀したかた多いことでありましょう。何ゆえ55度が60度になったのか理由は理解りません。
爾来三十年近く経てるのに建築業界はウイットねじ全盛。
数が多いから安くなるといっても同サイズのミリねじとウイットねじの価格差は50%以上ある。材料価格から原価計算するととてもじゃないが採算取れていない。不思議に思うておるわけであります。ホワイトバンドみたいに悠長に流通費とか取れるとは羨ましい。
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例えばアイボルトとゆうものがございます。こんなんです。
これでいろんなもの吊るワケ。落ちたら大変だなあ。この規格のアイボルトの保証荷重は使用荷重の三倍もあるのですね。これだけ鯖をよんでいるので、よっぽどボケナスなことせんかったら大丈夫なワケであります。
ウイットねじも大丈夫でしょう。三十年近く規格自体問題がなかったのでありますから。ただ(ああ蒸し返すなあ)最近の風潮で安けりゃあええユニクロ的百均的な潮流ですので、万が一のことがないとはいえない。
弊社の製造者に再確認いたしましたが吊りボルトはウイットの規格四級に適合しております。完璧にご安心くださいとは申せません。してないものも出回っております。
反対にわたくしは「100%大丈夫です、保証します」ってゆうことを断言なさる企業やその営業を信用していないことにしております。内田樹氏の「「責任を取る」という生き方」を狭義的ですがわたくしなりに消化いたしますと
施工業者が誤った方法で施工している、荷重を故意に少なめに設計しちゃった(ここから弊社です)材料が粗悪なものを使っていた、ケチって細い材料だった、不幸なことに相手の雌ねじもガバガバだった、このよーな不幸が重なった。
ふつーは大惨事にはならんのですよ。なぜならば余裕があった。事故を飲み込んでしまうだけの過剰な品質があった。
しかし、コスト削減で絞った雑巾は乾きかけております。つまらないところはうるさいんだけどなあ。万一問題発生するや否や、各部門のかたがたは保身に向かいます。
わたくしは社長ですので、責任は取らないといけないでしょうなあ。
「いまどき何でこんな昔の規格使ってるの、業界の慣習でそうなっていたとか何言ってるんですか、正気ですか、人殺しですよこいつは、人殺しっ。あんたんとこむちゃくちゃじゃあないのっ!」って朝から、みのもんたに怒鳴りまくられてしまう、こんなところでしょうか。
このような事例はどの業界にでもありうるのであります。内部告発みたいなええかっこではなく、事実だからなあ。そのときに1968年廃止の規格を堂堂とのほほんと野放しに状態。お得意様の業界も旧態依然。売るほうも需要があるからと思考停止状態。利益重視だから買い手は品質より価格優先。このような構図はあると思うなあ。誰に言ってもいいのか理解らないので、朝ズパッでお説教食らうのはだれになるのだろうか。
posted by 井上勝裕 at 15:28| Comment(0) | TrackBack(1) | 仕事関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: inowe社長が手抜きをしていると言うつもりではなくて、むしろ「未だにウィットねじを愛用するのはなぜか」という書き込みだったのですが、確かに私こそ誤解されてもしかたがないなあ、な文脈になってますね。言...
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