そして場合によってはインターフェロンによる治療を勧めるつもりだ。とーぜん。このとーぜんという説得力がどこまであるだろうか。自信ねえな。しかしこの治療は患者に対する負担が大きいのに対してその効果は低い。二度三度治療を受けても治癒しない場合もある。それを痛痛しく思いながらも、ゼンザイは医学の向上と、少しでも実績を多く残したいという気持ちがあった。併用する治療法も説明しようと考えながら。
C型肝炎訴訟で一律救済されるらしいと聞いたのでああ助かったとカンザブロウは思った。妻がC型肝炎に罹っており、闘病している。といっても判明したのは最近のことで、既に慢性肝炎に進行しているが穏やかな病状で無理をしなければ数値は悪くならない。むかしフェブリノゲンとやらという薬を投与されたらしいがよく調べていないのである。面倒臭いという気持ちもあって病院からは足が遠のいている。しかしカンザブロウもまた妻からHCVを所謂、水平感染していて彼のほうの病状が思わしくないことが判明したのはつい最近のことだった。沈黙の臓器とはよくいったものである。
迂闊であった。医者嫌いもあっただろうし、彼のほうは軽い肝硬変近くにまで病状が進んでいる。
妻のC型肝炎発症の因果関係が早く立証できるようにむかしの病院のカルテを調べてもらわねばと焦るのであった。カルテがあればの話であるが。
そのカンザブロウは通う理髪店でひげをそってもらった不完全な殺菌の剃刀から次の客であったヨウイチがHCVに感染した。ヨウイチも慢性肝炎になりつつあった。ここでヨウイチのつきあっているサツキは事情が複雑である。
サツキもC型肝炎キャリアになって久しいのであるが、詳細は最近知ったのである。現在は同じ病が進行し肝癌で他界した祖母から幼い頃「何か」を伝染されたらしいと父親から聞かされた。サツキは祖母を恨むつもりはないのであるが父親は病に伏せていた祖母のことをわけもなく罵っていたのを痛ましく記憶している。祖母はどこから感染したのかは不明なのであった。多分、注射か鍼灸で伝染ったのではなかろうかと推測している。何せむかしのことだもの。
深刻なのは彼女の元かれが現在HCVによる急性肝炎で別の病院に入院しているからであった。後から知ったこととはいえ本当に申しわけないと思った。
そして次の彼氏であるヨウイチとつきあうようになって自分の病気のことを知った。ヨウイチが通院することを知った彼女は本当に自分を呪いたくなった。ヨウイチは少し憤ったが、そんなことを言ってみてもサツキを傷つけるだけだ。気にするなよと言った。じつはカンザブロウから感染したものなので本当に気にするな、なのであったのだ。
肝炎感染者にこころない接し方をするひともいる。こういう場合に人間性が理解るというものだ、と彼らは口をそろえて言う。
(以上は架空話です。医学的誤謬がありましたら御指摘賜れば幸い)
しかし一律救済といっても「切り捨ては許しません」と原告団はいうが薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページのQ&Aによれば
Q6 C型肝炎にかかった原因がわからない場合でも、原告になれますか。というわけだから、わたくしは非難罵詈雑言を承知で申し上げるが一律救済とは言いながら取り敢えず薬害に絞り込むとゆう「線引き」を行っているのは原告の皆様ではないか。限定しないと闘えないから戦略として正しいのだろうけど。全ての患者を一律救済とゆう理想は確かにある。これが第一歩ではあるが釈然としない。
いいえ。何らかの手段で、血液製剤が投与されたことが証明できなければ、原告になることはできません。
しかし、自分に血液製剤が使われたかどうかは、知らない方がほとんどです。まずは、お気軽に弁護団にご相談ください。血液製剤が使われたかどうかについて、調査方法をアドバイスします。
世間一般が感傷に流されるが、しかしこの「線引き」のなかからこのようにカンザブロウもヨウイチもサツキも切り捨てられる可能性は頗る高いではないか。ましてや自覚症状のない肝炎患者はもっともっと潜在しているであろう。これら人災である。即死はしないだけに性質が悪い。
「あなたもそうかもしれませんよ」
まるで元カレの元カノの元カレのみたいに無責任な厚生労働省の官僚にそういってやりたい。彼らにアスベストにしろHCVにしろ自分に降りかかる可能性がある。パブリックな責任とはこういうものではないだろうか。
わたくしは、あまり長生きできそうにもないだろうし、したくもねえや、とあらぬことを口走るのであった。




