とオワリ自動車の資材係長は電話で激しくまくしたてた。
相手の零細テックのトヨトミ専務は
「そないなこと言われましても、無理なものは無理です。弊社もオワリさんを倣ってジャストインタイム体制なものですから。御高承の通り材料は北九州製鋼一社に絞りました。したがいまして無駄な在庫はございません。安く買い叩けたし、資金面では楽になるし、いーことばかりだ。しかし北九州の納期が一週間ずれたんですからペナルティは北九州さんに言って下さいよ。聞くところによると納期遅延の原因は御社のプレス購買部が強引な納期の前倒しをしたらしいんだから。うちは関係ねえよでございます」
と穏やかに説明した。
「そんなこと知りゃあせんが、たわけが!」
「ですから早速に現在製造してるじゃねえかようであります。弊社製造ラインの電算システムの緊急プログラムワリコミくんに沿って切削中です。切削が終わりますと、次の工程は御社御指定のエコ工房さんところで非クロム系非鉛系の特殊表面加工をいたします。こちらは融通が利きませんで三日かかるのです。どう努力したって十日後になります」
トヨトミは額に汗を流しながら説得した。
「横着こくでねえ。錆止めくりゃあ他所を探しゃあええだが」
「いやいや、オワリ品質を保ちつつ、かつ低価格でできるのはエコ工房さんとこしかありません。これは零細テックとしても譲れないのであります。『最高品質のものを、しかも環境に優しく、しかもまっすぐ正直に』という弊社の社是に反します。コンプライアンス違反になります。それこそ罰金ものになります」
「できしだゃあ夜中でもいいから持って来てくれんとおおごとだがや」
「それは効率の面、環境への配慮の両面でできないじゃあないですか。弊社の定期エコトラック便一日一便くんによって定刻に納められることとなっております時刻はたしか午後二時三十分でしたか係長。御社工場前に早朝納品待ちのトラックの行列にみのもんたも怒ってたじゃあないですか。駐停車とアイドリングの排気ガスに迷惑している近所のお年寄りの映像の後、ほっとけないって!言われますよ。いーんですかまた問題になっても」
「おみゃあさんにゃあ、往生こくがや。按配ようできゃあせんか」
「ですから精一杯やっております。御社のしくみを採用した結果なのです。一人勝ちしなくてもいいじゃあないですか。環境です。効率です。カイゼンです。しかし巧妙なシステムですなあ、環境保護と効率化とカイゼンってえのは。今度はブラジル人や元気のある日本人のニート期間工雇ってみようかなあ」
(以上は全てフィクションで固有名詞及び怪体な方言は一切実在いたしませんし誹謗する意図も一切ございません)
自動車産業のノウハウ普及を=中小企業支援で−安倍首相マジかよう。いかにも小童役人でも考えそうな画餅の如き空疎な内容。成長力底上げ戦略構想チームの内容ですけど、あまり練られた内容のようにお見受けいたしません。上っ面だけ見て中小企業が理解ったつもりなのであろう。スカスカじゃあないか。高校生の自由研究結果みたいな内容でございます。「競争力の高い自動車産業のノウハウ」が普及したら一等困るのはそれらを購入している頂点の自動車会社なのですから。
衆院予算委員会は23日午前、安倍晋三首相と関係閣僚が出席し、雇用・労働問題などに関する集中審議を行った。首相は中小企業対策に関し「競争力の高い自動車産業のノウハウを普及させることも必要だ」と述べ、高度な生産管理などの仕組みが中小企業に広がるよう支援する考えを示した。深谷隆司元通産相(自民)への答弁。
また、首相は下請け取引の適正化や、中小企業がIT(情報技術)を活用しやすい環境整備に力を入れる方針を示した。さらに、パソコンなどを使って会社以外の場所で仕事をする「テレワーク」人口の倍増を政府が打ち出していることについて「万が一にも不当な差別を受けることはあり得ないと約束する」と語った。
(2月23日11時0分配信 「時事通信」より)
仮に一次下請けに普及したら、二次下請けが窮地に立たされる。で二次下請けに普及したら三次下請けが困るので普及する。全てに普及したら今度は外国に皺寄せが行く。「高度な生産管理」はどこかにババを掴まされるひとのいい業者が存在しないことには成り立たないのではないかと呑気なひとたちの時間の浪費に対し理解に苦しみます。
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(以下引用)
別の×××系部品メーカーは、吐き捨てるように言う。「ゲンテイ(原価低減)と言うが、結局×××は工場のムダを塀の内から外に出しただけ。コスト努力を引き受けているのは下請けだ」
(×××は社名。自主規制)
(引用終わり)
まさに「皺寄せ」なのですね。
勿論フィクションです(笑)。
悲しいかな市場原理は冷酷なもので神経質なまでに高品質と強引な値引き要請をする「消費者」がいらっしゃるので、この悪しき循環のなかでどうするのか。「下請取引の適正化」によってコスト吸収が限界を超えると例えば支那から和のこころ「冠」(自主規制)を輸入しかねないなあ。
呑気なもので本当に「集中審議」しているのかなあ。
実は、畑違いの井上さんのブログですが、切り口と語り口のおもしろさに惹かれて、以前から時々お邪魔しておりました。
で、TBいただき、おもわずヤッターッ。
現場のことも仕事の世界も何も知らないものですが、首相の答弁を聞いて、何だか変な話しだなあ、と感じた次第です。
これからもよろしくお願い致します。
どうも恐縮です。
この手のネタは山ほどございますが、過ぎますとあの業務に差し障りがございます故(笑)ほどほどに小出しいたします。あくまでフィクションですけど。