2006年08月23日

坂東眞砂子の戯言

うちのみーがまた仔猫を産んだ。五匹もいてるんだ。みゃあみゃあ小さな声でないている。
かわいいなあ。
おかあさんが、電話をかけている。軽トラックが来た。その軽トラックのおじさんが
「奥さん、これお宅の飼い猫じゃあないんですか、もしかして。それだったら飼ってもらわないと困ります」
と恐い顔をして言った。
「これは野良猫なんですよ。うちも迷惑してるんです」
おかあさんの嘘つき。うちの猫なんだよ。
「だって去年も同じような依頼が来たじゃあないですか。憶えてますよ。奥さん、お宅の飼い猫じゃあないんですか、それだったら市としても引き取るわけにはいきませんよ」
去年みーは四匹産んだけど同じように市のおじさんに引き取ってもらったのだ。
「おかあさん、あのおじさんたちに連れられていっちゃった仔猫はどこで暮らすの?」
そのときに訊いてみた。
「まさこ、仔猫ちゃんばかりが集まって楽しく暮らす施設があるのだよ。天国みたいに白い建物のなかでしあわせに暮らすんだよ」
でもかわいそうだなあ。わたしはおかあさんと別別に暮らしたくはないなあ。
結局、仔猫は引き取ってもらえなかった。おかあさんは困ったなあと溜息を洩らしていた。
夜におかあさんがクルマのキーを手にしてる。外へ出て行こうとしている。仔猫を連れて。
「かあさん、どこへ連れて行くの仔猫たちを?」
「まさこ、こんなに沢山の猫はうちでは飼えないから、遠くへ行ってうちよりもかわいがってもらえるお金持ちのひとに拾ってもらうのよ。そして仔猫たちは御馳走を食べてしあわせに暮らすんだよ。ずっとずっと遠くでね」
嘘だ。おかあさんは嘘つきだ。お金持ちは血統書付きの猫を高いお金を出して買うんだもん。みーの仔猫みたいな器量の悪い猫は飼わないんだ。
「おんなじことなんだよまさこ、市のおじさんたちに引き取ってもらっても、遠くのいいひとに拾われることを期待しても、後は知らない世界なのよ」
みーのこどもを返してあげて。見えないところへ持ってかないで。
「見えないものはなかったこととおんなじなのよ、聞き分けの悪いこだねえ」
そんな遠くの知らないところで、しあわせになったことにしないで。お願いです。おかあさん。

日本経済新聞は会社でとっておりますが、夕刊までは読まないのであります。えらいこと(下記)になっております。
フィクション混じりだろう職業上。坂東眞砂子は能動的に亡骸にしてるのは惨い。ネタだと思いたい。
一方ふつうの善良なひとびとはスローターハウス行きになった見えない亡骸をまたそのしくみ自体をなかったことにしております。
女流作家「子猫殺し」 ネット上で騒然

2006年8月18日付け日経新聞(夕刊)「プロムナード」に掲載された、直木賞作家・坂東眞砂子さんのエッセイが、ネット上を騒然とさせている。「私は子猫を殺している」というのである。坂東さんの掲示板では、06年8月19日にエッセイのコピーが書き込まれてからコメントが突如急増し始め、坂東さんへの批判が怒号のごとく続いている。

騒ぎになっているのは「こんなことを書いたら、どんなに糾弾されるかわかっている」という文章ではじまる「子猫殺し」と題されたエッセイ。
タヒチに住んでいる坂東さんは、家の隣の崖の下の空き地に、子猫が生れ落ちるやいなや放り投げているという。
「社会に対する責任として子殺しを選択した」
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「子猫殺し」が掲載された2006年8月18日付け日経新聞。ネット上は糾弾の声で溢れている

内容は以下のとおりだ。

猫に言葉が話せるなら、避妊手術など望むはずがないし、避妊手術を施すのが飼い主の責任だといっても、それも飼い主の都合。「子種を殺すか、できた子を殺すかの差だ。避妊手術のほうが、殺しという厭なことに手を染めずに済む」。そもそも、「愛玩動物として獣を飼うこと自体が、人のわがままに根ざした行為なのだ。獣にとっての『生』とは、人間の干渉なく、自然のなかで生きることだ」。人間は、避妊手術をする権利もないし、子猫を殺す権利もないが、「飼い主としては、自分のより納得できる道を選択するしかない」。

最後は、
「自分の育ててきた猫の『生』の充実を選び、社会に対する責任として子殺しを選択した。もちろん、それに伴う殺しの痛み、悲しみも引き受けてのことである」

と締めくくられる。

坂東さんの「どんなに糾弾されるかわかっている」という予想通り、エッセイへの批判や怒りがネット上で噴出している。
「坂東先生の本はすべて焼き捨てます」

「坂東眞砂子・掲示板」では、06年8月19日のエッセイのコピーのカキコミがされてからというもの、批判や罵詈雑言で溢れ、その数は50近くになる。掲示板のなかで、坂東さんのファンだったという人も、
「もう、坂東先生の本は買いません。今まで大切にしてきた本も、すべて焼き捨てます。それが、先生に殺されてきた何の罪もない猫ちゃんたちへの、私ができるせめてものことだからです」

と書き込んでいる。
SNS大手のmixiでも、
「どう考えても産まれて来てから理不尽に殺されるより始めから産まれてこない方が不幸ではないと思うんですが…」

などという批判的な意見が多い。
人気ブログ「きっこの日記」でも、
「これじゃあ、人間が、避妊してセックスするのも、避妊しないでセックスして、できちゃった子供を人工中絶するのも『同じこと』って言ってるワケじゃん。それどころか、こいつのやってることは、生まれて来た赤ちゃんを殺してるワケだから、人工中絶よりもタチが悪い」

と手厳しい。
J-CASTニュースでは、エッセイを掲載した日経新聞の担当部署に電話で取材を申し込んだ。しかし、同社社長室・広報グループから書面で「エッセーは7月7日から毎週1回連載している。タヒチでの身辺雑記を中心に書いていただいている。該当のエッセーについてはメールで数十件の反響があった」という返答がきただけで、それ以外は答えてもらえなかった。

2006年08月21日19時35分 J-CASTニュース
posted by 井上勝裕 at 19:27| Comment(0) | TrackBack(21) | 世間さま | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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